心筋症
はじめに
心筋症は他のテキストで詳しく説明しているような弁や冠動脈などには異常はないものの、心臓の筋肉(心筋)が病的になり様々な病態に至ることを総称しています。
一般的に心筋症は時間とともに心臓の動きが鈍くなり、心機能は低下していきます。それに伴い心臓は大きくなることで代償(ごまかそうと)して心拡大・心肥大に至ります。
心筋症の原因は様々であり遺伝する先天的なものから、特発性(原因不明)のものまであり、確定診断には特殊な画像検査や遺伝子検査などの精密検査を必要とすることが多いです。
代表的な心筋症
拡張型心筋症
心筋の動きが徐々に悪くなり、最終的には心臓はほとんど収縮せず心筋もかなり菲薄化(ぺらぺら)になっていく心筋症です。根本的には治療もなく、若年者であれば心筋移植の適応になります。心不全のページでも述べたように抗心不全薬による薬物治療やデバイス治療で長期間フォローしていくことが必要になります。
肥大型心筋症
遺伝的要素が強く、心筋が病的に分厚く(肥厚)なってしまう心筋症です。
異常肥大心筋による弁膜症の併発や、致死的な不整脈による突然死が問題となります。
肥大した心筋は時間とともに今度は菲薄化していき、上述の拡張型心筋症のような形態となり最終的には心機能が高度に低下していきます。
治療としては肥大した心筋をカテーテルや外科的に焼却する治療法やデバイスを植え込むことで突然死予防を行います。
不整脈原性右室心筋症
名前の通り右室優位に心筋変性が進行する心筋症です。
病態としては拡張型心筋症と類似していますが、最終的には難治性心不全やあ致死性不整脈のため比較的若年で亡くなってしまう可能性が高いです。
その他特殊な心筋症
有名なものとしては心アミロイドーシスや心サルコイドーシス、心Farby病などがあります。診断には心臓カテーテル検査の他に核医学検査やPET-CT、遺伝子検査などの高度な検査を必要となります。難病指定されている疾患もあり、適切な診断や書類が通れば高額な薬物による治療を受けられることもあります。
さいごに
上記で示した心筋症はいずれも聞きなじみもなく、自身には関係ないと感じられる方も多いかと思います。しかしながら高血圧や動脈硬化を未治療で長時間経過することでも心筋症(高血圧性心筋症、虚血性心筋症)に至ることもあります。
どちらの病態も最終的には拡張型心筋症のように心筋は菲薄化し心機能が低下していくことが知られています。
生活習慣病の早期発見・管理は心機能保護の観点からも非常に重要となります。
文責:茂澤メディカルクリニック 循環器内科 茂澤 幸右